左官技能士  1999.1.20 ON AIR
 
日本の気候風土に
合った特質を持つ日本
家屋の壁を、“こて”
一つで築き上げるのが
「左官技能士」の
仕事です。
この左官現場の指揮を
とる、この道30余年の
浅原雄三さんは、
「京都の壁守りを
したい」と、京都を
舞台に、数多くの
文化財の修復に
取り組んでいます。
左官技能士は、労働省認定
の国家資格で、実技試験
では「仕上がりの美しさ」
や「寸法の正確さ」、
「材料の調整」から
「“こて”の操作方法」
まで採点されます。しかし、
実際の仕事は、技能試験の
レベルをはるかに超える
技術が求められます。
長年使い込んだ“こて”
は、職人にとって
何にも代え難い一生の
宝です。「ここまで道具を
使い込んでいって初めて、
自分が何かわかって
くるんですわ」と語る
浅原さんは、師匠から
もらった“こて”を
大切に使い続けています。
浅原さんのもとで修業を
している森田一弥さんは、
大学院で建築学を修めた後、
「図面を引いてるだけでは
建物をわかったことには
ならない」と思い、この
世界に飛び込みましたが、
左官の世界は想像以上の
厳しさでした。
「水引き」(乾き具合)
が重要な左官の仕事は、
太陽や雲など、自然との
対話が必要です。
陽の当たり方一つで
仕上げ方が違います。
昼の内に作業が終わる
ように、材料を調合
します。
こうして、美しく仕上げら
れた壁の真価が問われる
のは、10年、20年先です。
一つ一つの確かな作業が
何十年もの寿命の差となっ
て表れるからです。
“こて”一つで壁を築く
左官の技、そこには
自然を感じ取る、職人の
細やかさが支えて
いるのです。
 
 
 


●左官技能士〈国家資格〉

●受検資格:一般的には2級は2年、1級は7年の実務経験が必要。

●試験内容:学科試験/(1) 施工法   (2) 材料   (3) 意匠図案
           (4) 建築構造  (5) 製図   (6) 関係法規
           (7) 安全衛生

      実技試験/左官工事の施工など。

●試験日:学科/8月下旬〜9月上旬(統一実施試験日)
     実技/6月中旬〜9月上旬

●問い合わせ先:中央職業能力開発協会
        〒112-8503
        東京都文京区小石川1-4-1
        住友不動産後楽園ビル
        TEL 03-5800-3638

●URL:http://www.mhlw.go.jp/
 ※厚生労働省職業能力開発局のコーナーに技能検定についての説明があります。